はじめに
2023年11月に私も日商簿記3級の受験をし、無事合格いたしましたので、記憶が新しいうちに勉強方法や体験談を共有させていただきます。
簿記について
簿記の概要
簿記は「何か資格を取ろう」と考えた際に、まず最初に思いつく資格の一つではないでしょうか。この簿記と呼ばれる資格は国家資格ではなく、公的資格に位置します。
また、一口に「簿記」といっても、試験を主催する組織によって名称が変わり、大きく以下の3つがあげられます。
1.日商簿記
日本商工会議所が主催する検定試験です。正式名称は「日本商工会議所及び各地商工会議所主催 簿記検定試験」。上にあげられた3つの中で最も知名度・認知度が高く、受験者数も多く、学生から社会人まで幅広く受験されています。
私が受験した資格もこちらの資格になります。特に特別な理由がないならこの資格一択ではないでしょうか。
2.全経簿記
全国経理教育協会が主催する検定試験です。正式名称は「公益社団法人全国経理教育協会主催 簿記能力検定試験」。こちらは主に経理・会計の専門学校の学生向けの試験です。
3.全商簿記
正式名称は「全国商業高等学校協会主催 簿記実務検定試験」。こちらは主に商業高校の学生が多く受験する資格になり、これから経理や会計の職に就くことを目指している人にはお勧めな試験です。
また主催者別の3種類のほかに、職業別で複数の簿記が存在しますが、代表的なものとして大きく2つの簿記が存在します
1.商業簿記
一般的に簿記といわれた場合に示される簿記の種類です。各企業のお金の流れ(決算報告書や収支報告書など)にかかわる簿記の記帳方法です。
2.工業簿記
主に製造業の場で使われる簿記の記帳方法です。原価の計算などが求められることから、商業簿記よりは計算のボリュームが大きくなります。
なお、日商簿記3級の場合は工業簿記は含まれず、商業簿記のみが試験の対象になります。工業簿記については日商簿記2級以降で出題されます。
日商簿記3級とは
日商簿記の中では簿記初級に次いで2番目に難易度の低い試験になります。簿記は企業のお金の流れを帳簿に記録し、財政状況を見える化するために必要な技術ですが、簿記3級においては小売業や棚卸売業など比較的簡単なお金の流れについての対応が求められます。
お金に関する資格を取りたいと思っている人にとっては、まずは初めの一歩になるような資格です。ぜひ、挑戦してみましょう。ちなみに公式HPによるとビジネスパーソンが身に着けておくべき「必須の基本知識」であり、多くの企業から評価されていると謳われています。
試験難易度
日商簿記3級の試験合格率はおおよそ40~50%を推移しており、一般的な資格試験として難易度は低いといえます。数値的に見ても、簿記のファーストステップに位置する資格であるため、受験者の2人に1人は受かるような難易度です。
基本的な部分を対策していれば十分に合格が達成できる一方で、逆に簡単だろうということで舐めてかかると痛い目にあうかもしれない試験です。
試験内容
現在の試験内容では大きく3題が出題されます。
問題数 | 出題内容 | 点数 |
第1問 | 基本的な仕訳問題 | 45点 |
第2問 | 総勘定元帳の作成、補助簿の作成、空欄補充問題 など | 20点 |
第3問 | 精算表、財務諸表作成 など | 35点 |
試験時間は60分であり、100点満点中70点が合格ラインになります。
出題形式はある程度決まっているため、きちんと対策していけば70点以上を取るのは難しくありません。
受験方法
日商簿記3級の場合は、ペーパーテストである【統一試験】と、テストセンターで受験をする【ネット試験】の2種類があります。
試験方法は異なりますが、試験内容や試験条件などについては同じのため、自分の住む地域で受験しやすいほうを選ぶと良いでしょう。受験費用ですが、統一試験の場合は2850円、ネット試験の場合はそれに550円を追加した3400円となります。どちらの試験でも当日に通常の電卓(関数電卓はNG)は持ち込めるので準備しておきましょう。
統一試験
年3回(6、11、2月の日曜日)に受験ができます。
注意点として、統一試験の実施の有無は各地の商工会議所によって異なる可能性があります。まずは最寄りの商工会議所(自分が住んでいる地域の)について調べてみて、やっているのか確認してみましょう。試験日時が固定されていること、合否がわかるのに時間がかかってしまうという注意点があります。
ネット試験
いわゆるCBT方式での受験になります。受験会場に赴き、会場のPC端末で受験をする形式です。
こちらに関しては一部期間を除き、基本的に年中受けることができ、日時や時間帯を自分で指定することができるため、非常に融通が利く試験形態です。また、試験の合否がその場でわかり、合格しても不合格であっても次のアクションを取りやすいというメリットもあります。
注意点ネット試験では、選択項目はプルダウン式、そして自ら数値を打ち込むスタイルで試験が進められるため、普段は紙に書いて勉強している人はこのスタイルを知っておかないと当日手間取ってしまう可能性があるので注意しましょう。
筆者としてはネット試験での受験がおすすめです。会場さえ空いていれば、いつでも受験できる手軽さと、なによりもその場で合否がわかる安心感があります。
こちらの受験方法も各地の商工会議所にて案内があるはずですので、一度確認をしてみましょう。
おすすめ勉強方法
勉強時間
一般的には日商簿記3級の合格には平均75時間程度の勉強が必要とされています。
とはいえこの辺りは各人のポテンシャルであったり、どれくらい1日当たりに時間を割くことができるかなど、個人によって差があるので、あくまでも平均という認識でいいと思います。
だらだら勉強しても時間がもったいないので、できるだけ集中して短期間で勉強をし、最速で合格を目指しましょう。
勉強道具
私の場合は完全に独学で勉強をしており、スクール等には行っておりません。学校の授業で教えてもらえるとか、そういった環境の人であればそれらを集中的に活用していくのが無駄なお金もかからず良いと思います。私の場合はお金ももったいなかったので、参考書・問題集のみでの勉強です。
ちなみに使用した参考書と問題集は「みんなが欲しかった!簿記の教科書」シリーズです。
私は本屋で立ち読みをして、「なんとなくわかりやすいかなぁ」ぐらいの感覚で選びました。簿記に関する参考書も色々とあるので、一度本屋へ行ってみて、相性の良い本を見つけるものいいかもしれません。こちらの参考書はネット試験の練習ができるコードも付与されており、直前の試験問題として活用ができます。
筆者の勉強方法
まずは一通り教科書(参考書)を読み通し、「簿記とはなんぞや!?」みたいなところをなんとなくでもいいので知りましょう。
2周目以降で教科書の巻末にある演習問題を解きながら、問題に慣れていきましょう。できなくても諦めることなく、まずは全体を網羅して幅広く問題に対応できるようになっていくことが重要です。
そして、教科書内の演習問題をやり終えたら、問題集に移行します。
問題集を順次進めていき、間違えたところは復習したほうがもちろん良いです。本テキストには予想問題ではないですが、模試的なものが3回分ついているので、一通り問題集と解き終えたらそれに着手し、実際の試験での時間配分や感覚を養っていきます。このとき、解けなくても問題ありません。実際の試験問題の解き方はその形態でしかわからないものなので、まずは解答を見ながらでいいので解き方をしっかり理解しましょう。
問題集についても2周は繰り返すと知識や解き方が定着するので、是非とも反復練習を行うことをお勧めします。
私は上記の勉強法をベースに1日1時間は勉強するように心がけ、1か月で合格までたどり着くことができました。
合格のコツ
合格のボーダーラインは100点満点中70点です。点がとれるに越したことはないのですが、100点満点を取らないといけないわけではありません。効率的に合格するためにも、各第問の特徴をとらえて最低限押さえておきたいポイントを押さえましょう。
第1問
仕訳問題が全部で15問出題され、1問につき3点の配点になります。この問題は20分で解き切るイメージで行きましょう。意外と難しい問題が出たりもしますが、基本的な仕訳問題がほとんどですので、8割程度(36点)はここで点を取っておきたいです。
仕訳問題はひたすら練習してパターンを習得するのが一番良いので、問題集を活用して練習しましょう。
第2問
与えられた文章をもとに総勘定元帳などを作成していく問題と、空欄補充問題が出題される傾向です。この問題は15分で解き切るイメージで行きましょう。空欄補充問題を100%正解するために細かいところまで参考書を読み込むのは試験を合格するだけであれば時間がもったいないので、配点も少ないため多少は犠牲にしても良いかもしれません。ただし、総勘定元帳などの作成についてはある程度パターン化できるので、こちらは反復練習をして満点を押さえていきたいところです。こちらについては半分である5割(10点)は最低でも取っていきましょう。
第3問
精算表や、損益計算書、貸借対照表を作成する問題が出題されます。この問題は15分で解き切るイメージで行きましょう。
問題文に10個弱の条件が記されており、それぞれを仕分けして、対応する表を完成させる問題が出題される傾向にあります。
問題文を見ながら仕訳を正確に行うことさえできれば満点を狙うことも容易であり、ある程度問題文もパターン化されているので問題集や予想問題を活用して出題形式に慣れましょう。
とはいえ、この問題は1つ数字がずれると共ずれで最終的にも数字が異なる・・・という事故が起きやすいので、7割(24点)を目標に解いていきましょう。
何はともあれ、第1問で出題されるような仕訳を正確に、早く行えるようになることが合格への近道になります。何度も言いますが、仕訳問題を反復して解いていきましょう。
受験しようと思ってる人へ
受験しようと決めたらまずは商工会議所のHPを見て、受験スタイルや目標日時を決めていきましょう。
商工会議所のHPはこちら⇒https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping
簿記3級の勉強をするだけでも、ビジネスの世界でのお金の動き方が少しずつ追えるようになりますし、合格すればまずは履歴書に書くこともできる資格を手に入れることができます。
私自身は本業で簿記を使うことは全くありませんが、本業とは違う道を作るため、まず取り掛かりました。
皆様も、いろんな可能性を広げる第一歩として挑戦してみてはいかがでしょうか。